「バットマン ゴッサムナイト」の感想


題材が良かっただけに残念な作品

本作「ゴッサムナイト」はアメコミに近い構成になっており、オムニバス形式の短編ドラマが続いていきます。それはバットマンが登場してから間もない頃の話に始まり、彼の修行時代、ヴィランとの激闘など多岐に渡ります。そのどれもコレもが独特な作風であり、絵柄も一冊の中に複数のアーティストの作品があるように、いちいち変わっているという拘りっぷり。嬉しいことに、日本語吹き替えでのバットマンの声優は旧アニメ版でも彼を担当した玄田哲章氏と、クールなキャラに定評のある三木眞一郎氏という嬉しい組み合わせ。絵柄に合わせた声優の交代は大きな見所となっています。さらに、本作は一応「ダークナイトトリロジー」内での時系列を舞台にしているため、ゴードン警部、執事のアルフレッド、そしてバットマンのブレインであるフォックスは同映画版ので声優陣を起用しています。これによって、映画しか観てない方でも無理なく物語にのめり込むことができるでしょう。

…さて、ここまで喜んでおきながらこんなことを言うのもなんですが、正直この作品、評価としてはかなり微妙です。それは先にも上げた「アメコミの雰囲気を再現しようとしたオムニバス形式のドラマ部分」に原因があるためです。今更ながら補足的な説明となってしまいますがアメコミはほぼメインとなるライターやサブライターによってその性質や設定、さらに後付要素に至るまで大きく変貌を遂げることが珍しくありません。本作の失敗点はまさにここにあり、コミックであれば考察の余地を残せる作品を、わざわざアニメ化してしまったことで印象に残りにくい話と化してしまいました。また、中途半端かつ作風が一話一話ガラリと変化してしまうために理論武装を固めた映画版と同じ時間軸に位置する作品とは考え辛く、むしろそれを原作とした全くの別物という印象を抱かずに要られません。まさに長所でも有り短所でもあるんですね、この点は。コレだったら、最初から完全オリジナルの長編アニメとして制作していたほうが一作品として理解しやすいし、その独特なアクションや絵柄にもなれることが出来ます。あるいは時系列を整理して、一本の作品として構成するのも良かったかもしれませんね。こういった配慮が観られなかったのはバットマンファンとして真に残念なことに思えます。

ただ、そういったぶつ切りエピソードのすべてが悪かったというわけではなく、中には上述した「完全オリジナル」としての存在感を放っている話も存在しました。それが表紙の絵にもなっているエピソード5とエピソード6(そもそも表紙で推してる話が終盤に来るって割りと詐欺じゃないかと感じるのは俺だけ?)。

そのエピソード5は、バットマンことブルース・ウェインの修行時代の話。‘痛み’を克服する方法を長年探してきた彼は、ついにその秘技を持つ人物と接触。数ヶ月に渡る訓練を積むことでその奥義、特殊な自己暗示の術を体得した彼は、自分があるべき場所であるゴッサムに舞い戻る……。
ぶっちゃけ、オチはかなり微妙に思える内容なのですが、修行時代に焦点を当てた話としてはかなり完成度が高く、彼が如何にして精神の力を尊重し、自分として存在が成すべきことを見つめ直したのか?というバットマンの根本に位置する問題を上手く扱っていたように思えます。そしてもう一本のエピソード6。コチラは、去年実写化されたことでも有名なヴィラン、デッドショットとの対決を描いた話となっています。話としては当たり障りの無いバットマンのドラマ(←ココ重要)となっており、シンプルに彼のカッコよさと「殺しは絶対に犯さない」という信条が伝わってくる物となっています。

 

【まとめ】

ここまで書いてきた上での総括としては…やっぱりオススメできる作品ではありません。アメコミにある程度親しんでるとは言えこのオムニバス形式はキツイですし、褒めるべき点があんまないんですね。5点満点で言えば2点。これはバットマンのアニメ化という部分と上述した2つのエピソードが面白かったことについてです。しかし、今風の作画に、こういった形式でしか描けないリアリティと幻想的な要素が融合したゴッサム・シティの町並みなど、美術面に関しては見どころがなかったわけではありません。まあバットマンを題材としたものならば、「キリング・ジョーク」や「ダークナイト・リターンズ」など有名どころのアニメ化作品も多数ありますし、今度はそちらを鑑賞してみたいですね。ということで、「ゴッサムナイト」の感想でした。皆さん、ゴッサムナイトではなく、「ダークナイト」の方を観るんやで…。