キャンディマンとかいう都市伝説凡作ホラー

2017年06月7日

模範的なホラー映画

人間の恐怖から具現化し、その恐ろしい噂こそが存在を定義するアイデンティティである都市伝説。「スレンダーマン」しかり「ブギーマン」しかり、その生まれは迷信からであり、形容しがたい恐怖の象徴であるといえます。本作「キャンディマン」もそんな都市伝説を題材としており、その中に内包する人間の持つ恨みや憎しみ、そして社会から疎外された損失感を根底に据えた作品でありました。

【あらすじ】

都市伝説について研究しているヘレンは、黒人居住区に伝わる「キャンディマン」の伝説を調査していた。「キャンディマン」とは、鏡の前でその名前を5回唱えると現れ、名前を呼んだ者を右腕に取り付けた鉤爪で殺害するという、伝説の殺人鬼であった。

その伝説に懐疑的だったヘレンは、面白半分に鏡の前で「キャンディマン」の名前を5回唱えてしまう。それを境に、彼女の周囲で奇怪な殺人事件が次々と起きるようになる。

【感想】

さて、結論から申し上げましと本作はホラー映画としては少々ボリューム不足かつ模範的過ぎた内容であったといえます。

明るいながらもどこか虚しさを感じる前半な雰囲気や、周囲の人間の噂話を通して霧のような存在の証拠を掴もうとするこの手のジャンルでは定番と言える展開は、まさに具体的な形をつかめない都市伝説を扱う作品としてはこれ以上にないミステリアスな作劇に仕上がっていると思えました。加えて、ここで証拠として挙がった噂話をスラムの要所要所で挟むことで「見てはいけないものを見てしまうのではないか?」という不可解な怖さと好奇心を掻き立ててくれます。ビジュアル的なアザとさを含んではいるものの、作り手の工夫がそこかしこに伝わってきます。

が、そんな奇妙かつ不可解な恐怖も噂の原因であるキャンディマンの全貌がハッキリと殆ど消し飛んでしまいます。都市伝説の類のホラーの本質とはすなわち「見えないものへの恐怖」や「暗闇への拒否反応」からきていると思うんですよね。ゆえに、陽光のもとにその正体をさらしてしまうということは、最も重要なピースを捨てているようなものに思えます。さて、そんな必要条件を犠牲にしてまでキャンディマンが伝えたかったことはなんなのか?本作そのものの本質はここに存在しました。

中盤以降の展開は、完全に姿を現した怪物キャンディマンに追われるヘレンの逃走劇へと物語が完全にシフトします。ここでの話のミソとは、ヘレン以外の人物にキャンディマンが見えていないことにあるんですね。こうすることで、世間からは完全に狂人のような扱いを受けてしまい、完全に社会から疎外された存在と化してしまうんですね。これこそが本作のテーマであり、キャンディマンとは、まさに忘れ去られてしまった存在全体の代弁者であったのでしょう。こう考えると、ラストも非常に皮肉な終わりを迎えてるように感じられます。それはぜひ、皆様の目で確かめてみてほしいと思います。……まあ、正直言うと予想しやすいうえに、あんまり驚かないような展開であったりします(笑)。上述の全体評にもある通り、ホラーとしては不足感が否めない内容であり、その質というものも大変模範的な作品にとどまっています。ゆえに、ホラーとみると凡作ですが、サスペンスとしてみると中々に刺激的なものに感じられました。