スペース・スクワッドは超弩級の名作だった


    東映版アベンジャーズ

この作品がネット内を騒がせたのは今から数か月前にさかのぼります。当時は「スーパーヒーローイヤー」とかいう名前だけの記念企画の真っただ中でライダーやスーパー戦隊を記念した作品が集中的に制作された年でありました(まあその大半がライダーだったんですけどね)。その年の最後に全貌が明かされたのが本作、「スペーススクワット」でありました。宇宙を代表するヒーロー、ギャバンデカレンジャーが夢の競演を果たす。そんなニュースはネットを非常に盛り上げましたが、監督がエロ監督として有名な坂本氏であったこと、「ジャスピオン」に登場する敵キャラマッドギャランが出てくるということ、そしてあからさまに世界を賑わせているアメコミ映画に便乗したタイトルだったことが重なり、期待と同じくらい大きな不安が(一部)のオタク層で膨らみました。

さて、そんな不安と期待が入れ交わった本作でありますが、果たして公開された映画の内容は…いやぁ最高でしたねまさに手のひらクルーの傑作でありました。新生代ギャバンと特捜戦隊デカレンジャーの絡みをここまで違和感なく描きつつ、宇宙系ヒーローがスクラムを組むというこの流れはまさに興奮以外の何物でもなく、東映が本気で自社ブランドのヒーローたちを用いて「アベンジャーズ」を作ろうとしてることが伺えました。

あらすじ

かつない規模を誇る巨大犯罪組織「幻魔空間」が現れた。銀河連邦はこれの調査を行うも、あまりの規模の多さに苦戦を強いられ、いまだその全貌がつかめずにいた。そんな時、大幹部マッドギャランの暗躍を知ったギャバンこと十文字撃はその取引現場を押さえようとする。しかし、敵の予想外の返り討ちに会い相棒を失ってしまう。絶体絶命の撃…。そんな彼を救ったのは、デカレッドこと赤座伴番であった。バンの活躍もあり、間一髪のところで銀河連邦本部に帰還した撃は、そこで地球署のたちの存在を知る。この事件の謎を解くため、そして失ってしまった相棒の仇をとるため、撃は一人地球へ向かう。

本作を細かく語るうえで欠かせないのが二つのヒーローの活躍でありましょう。近年の東映特撮でも、このような複数人のヒーローの絡みは描かれてきました。が、その場が場だけに散々たる結果に終わり魅力を引き出すに足りないものばかりでありました。今回はその教訓があってか、はたまた監督の技量なのか(あるいはその両方)は想像に任せるしかありませんが、宇宙刑事と特捜戦隊両方の魅力を引き出すことに成功しており、終始画面にくぎ付けの状態が続きました。特に突っ走ると止まらない性格であるものの、冷静に物事を分析する撃と本編から数年が経過した特捜戦隊が協力して捜査を開始する場面は、エンターテイメントとし手の完成度もさることながら、一本の警察物としても中々の完成度を誇っており、その本気具合が伺えました。また、低年齢層に配慮した比較的わかりやすい推理の過程も好感が持てましたね。

さて、そんなシリアス寄りの捜査場面が中心となる序盤から中盤の流れですが、熱い場面はしっかりと抑えられています。例えばマッドギャランとのリベンジ。これは熱い。結末はかなり意外なものに終わりますが、ギャバンやジャスピオンを知らない方でもその興奮と絶望は伝わってくるでしょう。また、若きヒーロー十文字撃と熟練者となったデカレンジャーたちとの対比も明確で、この凸凹具合が終盤でのカタルシスを生み、チームヒーローとしての説得力を生みだしてるといえるでしょう。こういった作品世界や経過年数を考慮した設定や演出の数々は、懐かしさとともに今作への好感を生み出すのに一役買っており、監督やスタッフがいかに両作品を愛し、研究したのかを連想させるに至っています。

その愛と探究心はアクション面でも存分に発揮されています。上述した捜査パート、ドラマパートが終わると、いよいよ元の活気を取り戻したデカレンジャーとギャバンの共同戦線が実現するのですが、これを描いた終盤がまた熱い!監督曰く、個々のヒーローを同格に扱うために、あえて別々にその戦いを撮ったといいますが、なるほど確かにそれは効果的な演出となっています。まずデカレンジャー。彼らの特徴と言えば長い前口上であり、しばしそれがテンポの阻害になるとして問題視されることがありました。しかし本作では、そこに至る過程で敵との因縁や戦闘を十分に挟むことで、その長い名乗りを最高の盛り上がりとして挿入するに成功し、懐かしさと興奮、そして感動がこみ上げてきました。一方ギャバンサイドでは、80~90年代らしい男臭さと泥臭さを再現した戦闘が展開され、デカレンジャーのそれとは、これまた上手い対比として生きていたと感じ取れます。ですが、この場合も、ギャバンだからこそ得られる興奮を十二分に描写しており、一条列が現れる場面は、ファンでなくとも声が出てしまうことでしょう。また、マッドギャランとの最終決戦でも、本作だからこそできる、ある種反則の入れ混じったにくい演出を挟むことでそのヒロイズムを爆上げし、最高のフィナーレを迎えたといえます。

ここに少々の不満が残ったとすれば、それは強すぎるマッドギャランの存在でしょう。お披露目の場でのインパクトは重要でありますが、強さのインフレ化が過ぎたかなと、個人的には考えたりもします。まあ、この衝撃があったからこそ、爆発的なカタルシスが生まれたと思えば素晴らし事なんですがね。それ以外はすべてが監督の趣向とかみ合っていたといえます。やっぱりこの人、戦隊やメタルヒーロー向きなんだなぁと改めて実感しましたね。

こうして戦闘パート、ドラマパート、キャラの動きなどが完璧にかみ合った本作は熱狂の中で締めくくられました。…しかし、これだけで終わらないのが本作の魅力。そう、すでに巷では噂となっていますが、この「スペーススクワット」はまだ続きます。しかも、最後には物語のさらなる拡張を示唆する「仕掛け」が施されており、ファンの方は興奮のあまりぶっ倒れてしまうかもしれません(実際僕はある敵キャラの登場を知り、死ぬほど喜びました。さあだれでしょう?)。この一連の流れから理解できるように、東映は本気でアベンジャーズを作ろうとしてるんですね。これは本当にうれしい動きと言えます。今までさんざん振り回されてきたファンの苦労も、これでついに報われると考えられます。僕も期待以上にこの出来に感動するあまりです。このスタッフで、ぜひ伝説を残してもらいたいです。以上、「スペーススクワット」のレビューでした。