バットマンシリーズ総括 その一


ふと思い返してみると、最近の僕はMARVELヒーローに関する記事ばかりを書いていて、DCのヒーローには全く触れてなかったことに気づきました。ジャスティスリーグという超大作の公開が数か月後に控えた今、これはまずい…。そう思った僕は、まずDCヒーローで何が有名で、どの作品について最も深く語れるかを考え、この「バットマン」の紹介にたどり着きました。バットマン、1938年にディテクティブコミックにて鮮烈なデビューを飾って以来、スーパーマンに並ぶDCの二大スーパーヒーローとして大活躍してきました。そんな人気者だけあって、彼を題材にした作品は単独作ならばコミックヒーローで一番多いでしょう。ゆえに、初心者の方にとってはなかなかにとっつきにくいという印象を抱かれてしまうかもしれません。ので、今回もこれまでの総括記事同様に、バットマンサーガを二つに分けたうえで年代に沿って紹介していきます。なお、紹介するのは純粋な映画作品のみにとどめるので、ドラマ版やアニメ版は省略させていただきます。

 

【バットマン】

アメリカ一の無法地帯として恐れられる街「ゴッサム・シティ」。犯罪者は街にあふれ、警察組織すら汚職を平然と繰り返す。そんな街にある日、蝙蝠の姿をした怪物が現れた。その名はバットマン。バットマンは犯罪者を容赦なく裁き、街に平和を取り戻そうと尽力する。

奇才ティム・バートン監督によって制作された作品。この当時のバットマンといえばフランク・ミラー著の「ダークナイト・リターンズ」の影響もあり、非常に陰鬱とした作品という共通認識がありました。ゆえに、今作で描かれるバットマンも過去のトラウマが忘れられない半狂人という面が強調されており、しばしメインヴィランのジョーカーとは比較の対象として演出されてきました。この「二面性」や「狂人」という部分は以後の作品にも共通して内包されたテーマでありますが、ここまで濃厚にバットマンの異常性に触れた作品はバートンならではといえるでしょう。この作風は、次作「バットマン・リターンズ」で完成形を迎えます。ではこの作品はバットマン史に輝く傑作として初心者の方に見てる作品か?と聞かれたら答えはNOでしょう。キャスティングも完璧、ガジェット類も見事に再現し、ドラマで魅せる作品でありながらアクションも上々…なのですが、少々暗すぎるのが玉にきずです。これが祟ってか、ヒーローとしてのカタルシスはあまり感じられない内容になってしまったといえます。

【バットマン・リターンズ】

ジョーカーの死によって平和が戻ったかに思われたゴッサム新たな脅威が現れる。政権進出を果たすことでゴッサムを影から支配することを目論む怪人ペンギンは市長候補として有力視されてる人物と手を結ぶ。バットマンは彼の正体を暴くために行動を起こすが、それが悉く裏目に出てしまう。

さて、「二面性」と「狂人」という要素にバートンは自身の独特手法を加えることで、完成形へと導きました。その成果がこの「バットマンリターンズ」であります。今作のバットマンは前作比べて明らかに精神的に不安定となっており、たびたび苦悩するシーンが挿入されます。に対して、今作のヴィランペンギンは緻密な策略に基づいて行動することで市民からの支持をドンドン集めていきます。つまり彼はバットマンが映画全部を通して得られた信頼というものを、ものの数十分で得ることができたのです。ここから彼とバットマンの明確な対比構造が見て取れます。どちらも過去の強烈な体験に基づくトラウマを抱えた狂人であり、人々に自分を理解してもらいという願望を底に据えて行動してきました。バートンはこれを通して、ブルース・ウェインという仮面をかぶったバットマンの内面的弱さを描き出したのです。さらにこの作劇にキャットウーマンという第三者を登場させることで、バットマンの置かれた悲劇的境遇を濃密なものとし、誰からも理解されない怪物たちの物語として完成させました。ある意味今作は、監督の自己主張の塊のような物ですが、「ビートル・ジュース」や「シザーハンズ」に始まるバートン作品全体に通ずる「怪物の人間化」という面が奇跡的にマッチした結果がとも考えられます。

【バットマンフォーエバー】

自分の顔を損傷した事件で自分を助けてくれなかったバットマンに恨みを抱くトゥーフェイス/ハービー・デントは、街中で暴動を起こしていた。一方、バットマン=資産家ブルース・ウェインの経営するウェイン・エンタープライズでは、エレクトロニクス部門の研究員エドワード・ニグマが、テレビ信号を直接人間の脳に送る3Dホログラム装置「BOX」を開発する。しかし脳を人工的に操作するマインドコントロールには倫理上問題があると危惧して、ウェインは融資を拒否。失望して会社を辞めたニグマは、トゥーフェイスと組んで強盗で莫大な資金を調達し、ホログラム装置を量産する。ゴッサムシティーでは「BOX」が大ブームとなり、ニグマは大富豪となる。

狂人的な悪役等、前作の要素を一部引き継ぎつつも、その趣を一新して制作されたシリーズ第三作。作品自体の傾向は、バットマンの名を世界的なものとした66年のドラマ版に回帰してるといえ、度肝を抜かれるでしょ。それでいて、画面全体を埋め尽くす色彩は90年代の洋画らしく若干サイケデリックな意匠を孕んだもので作風全体の変容を表してるといえます。さて、シリーズ紹介においてわりとスルーされがちな本作でありますが、まあそれも仕方ないと思われます。なんせこのひとつ前がバットマンの定義そのものをある意味決定づけた傑作であり、このひとつ後がバットマンの存在そのものを揺るがしかねない駄作だったのですから、もうこれは運が悪かったとしか言えません。ではスルーすべきなのか?と言われればそうでもありません。上述したダークな要素を引き継ぎつつも、明るく一新されたストーリーは一見の価値があり、ど派手なガジェット、マシンのアクションも現代の目で見ても十分斬新な物に写ります。ゆえに、バットマンの歴史を語るうえで重要な一作として抑えておくべきでしょう。

【バットマン&ロビン Mr,フリーズの逆襲】

バットマン&ロビンの前に現れた冷凍怪人Mr.フリーズ。不治の病の妻を冷凍保存する際、事故で氷点下でしか生きられなくなった彼は、冷凍スーツの原動力ダイヤモンドを強奪する。そのころ南米ではウッドルー教授の実験により、改造戦士ベインが誕生。ウッドルーはこの筋肉増強剤を闇で売りさばこうとしていた。植物学研究者パメラ・アイズリーはその秘密を知った為殺されかけるが植物の毒素と反応を起こし、フェロモンと毒を含有するポイズンアイビーとして蘇生。ウッドルーを始末しベインとともにゴッサムへ向かう。

初めに言っておくと、この作品は駄作です。前作で好評得た複数のヴィランサイケデリックな画面構成より近未来的な意匠を得たマシンやガジェット等受け継ぐべきところは受け継いだといえます。しかしそれは、綿密な企画と構成に基づいていたからこそ成功した要素であり、今作のようにウケたからすぐ作られた続編では到底できない芸当でありますしょう。そこに目を向けず、一部分だけを肥大化させるに終始してしまったことが最大の失敗といえます。実際ヴィランだけ見るとオールスターとも呼べる豪華なメンツです。しかしその一人一人の行動理由が大変薄いかつバラバラすぎるために、ダークな一面もテーマ性も何も感じさせないものでした。また、タイトルに「ロビン」とついてることから、彼が中心となって描かれるドラマだということがわかります。これをメインとして意識しすぎるあまりブルース・ウェインの存在が空気と化したのもダメな原因でありましょう。通常、この手のサブキャラ推しが通用するのは連続ドラマなどに限られるとことは誰の目にも明白であるでしょう。確かにこの場合も、シリーズがすでに四作目に到達してることから、ブルースの内面描写は薄くてもよいと思われますがそれにしても限度があります。妙に悟りを開いたようなキャラ設定をしていながら、別段導き手としての威厳や何かを強く見せるわけではない。…つまり完全な構成ミスです。結果として本作は、脚本、演出、デザイン等あらゆる点から駄作の烙印を押され、バットマンの映画シリーズそのものが存続の危機に立たされるという事態に陥りました。しかし、そんなバットマンシリーズとワーナーを救う男がスタジオに現れたのです…。

【まとめ】

第一回目はティム・バートン監督作品を中心にまとめてみました。こうして思い返してみると、映画におけるバットマンの原型というのはすでに一作目で完成を迎えていたことが伺えます。特に、二面性や善悪のあいまいな判断という点ではこちらのほうが後発のシリーズよりも明確に示してるといえます。また、どこか幻想的に描かれてきたゴッサム・シティを的確に再現してる等、特撮方面に関しても分があるように思えます。よりダークで危険性をはらんだバットマンを観てみたい考えてる方はこちらから作品を進めていくのもよいかもしれません。ということで、二回目にご期待ください!