最後のウルヴァリンの戦いを描いたローガンを観てきた


最後のウルヴァリンは人生の物語

怒りと悲しみを胸に秘めた無敵の男、ローガン。M-MRNシリーズでもトップレベルの人気を誇る彼は単独でのスピンオフが二本も制作され、その地位を不動のものとしました。そんな彼の最後の戦いを描いた衝撃作がこの「ローガン」であり、単なるアメコミ映画の範疇を逸脱したヒューマンドラマとして高い完成度を誇る作品であったといえます。

【あらすじ】

近未来、神による進化の片鱗と言われたミュータントは激減し、絶滅の危機に瀕していた。X-MENの仲間とともに人類とミュータントの間を駆け抜けた戦士ウルヴァリンもすっかり衰え、かつての信念を失いかけたチャールズを抱え、その日暮らしの生活を繰り返していた。そんな彼らに転機はミュータントの少女、ローラとの出会いによって訪れる。新生代ミュータントの誕生、それは希望であった。この希望を絶やしてはならぬとチャールズはウルヴァリンに告げる。かくして、ミュータントの未来を救うための新たな旅が始まったのであった。

【感想】

ミュータントが絶滅しかかった退廃的な未来というしょっぱなからとんでもない展開から始まる本作。そのせいか、ローガンにしろチャールズにしろどこか悟りを開いたような雰囲気に包まれており、今にも死にそうな肉体的な「老い」に加えて、精神的疲弊と「老い」が画面越しに伝わってきます。何より驚かされるのが、鋼のような意志と信念に基づいて行動していたチャールズが自らの人生を悔いること。ローガンの痛ましさも相当な物ですが、それまでの戦いを否定するかのようなチャールズには哀しさすら感じさせます。まあ、前前作であんなに必死になって守った彼らの未来がこんな様になってると思うと、廃れた心に納得がいかなくもないでしょう。

このヒロイズムの崩壊ともとれるテーマのアンチテーゼが、そこかしこに散りばめられています。その最も大きな例が実際のアメコミを用いた彼ら自身の否定。ここでローガンは明確にコミックの世界を否定します。人によっては首を傾げてしまう場面にも見えますが、こうすることで直前に挿入された「シェーン」におけるテーマと、今作のテーマと合致させ、現実の厳しさを突き付けてるのだと思えましたね。

それを強調するためか、今作での戦闘シーンはデッドプールの恩恵もあって全編通し痛々しく、生々しいバイオレンスなものに特化しています。とにかく今回は死ぬんですよ、人が。この年齢層の低いをかなぐり捨ててまで挿入された暴力描写の数々は、各キャラの心の痛みや激情、そして死を痛感させる大事な要素として活きているんですね。まあ正直言うと後半のアクション描写は過激すぎ、ある意味ではカタルシス不足ともいえるこの動きにはもう一捻りほしかったですね。ですが、ともすればゾンズの似非グロアクションになってしまったかもバイオレンスを挿入したことは結果的に英断だったとも言え、痛ましいまでのローガンの英雄っぷりを表すには適していたと言えるでしょう。

こういった殺伐とした雰囲気の中でローガンたちは新たな希望を求め、半ば無理やり新世代ミュータントのローラと共に旅に出るのですが、この辺は完全にロードムービーのノリですね。これもまた「アメコミ映画らしからぬ」といわれる一因でありましょう。でもここからが本番なんですよね、本作は。一見すると前述したヒロイズムの損失に思える一連の描写も、兵器として生まれてきたローガンやローラが、これまで得ることのできなかった愛や死、そして平凡ながらも幸せに包まれた人生を知るための大事な舞台として機能してくるんですよ。とりわけ「家族愛」に着目した展開は「人生」という普遍的な現実を語る上では非常に適した内容といえます。しかし、最もメインとなるローガンとローラとの親子関係は丹念に描かれてる部分はあるものの若干の描写不足に感じられました。確かに終盤からは二人の物語にシフトしていきますし、不器用ながらもお互いを気に掛ける文字通り「親子」としての感情の動きを垣間見ることができ、この物語の終わりにも爆発的なカタルシスを与えることに成功しているのですが、いまひとつ決定打に欠けるものでした。

ですが一度は人生を捨て、死すら切望したローガン=ウルヴァリンが戦いの果てに、親子の「情愛」という新しいアイデンティティを確立した、もとい勝ち取った物語は彼の人生の締めくくりとしてはこの上ない完成度を誇っており、演じたヒュー・ジャックマンと共に17年間ウルヴァリンというキャラクターに付き合ってきたファンにとっては最高の回答を与えてくれた作品ありました。これはぜひ、劇場で鑑賞し、十分な余韻に浸ってほしいですね。

ではみなさん、さよなら、さよなら、さよなら。