桜多吾作版グレンダイザーが予想以上に名作だった!

2017年02月28日

先日、「買いました!」と大々的に宣伝(笑)した桜多吾作版グレンダイザー(以下桜多ダイザー)ですが、読破しました。その感想は…恐ろしい名作です。これは、原作付きに映画作品などで、「作りてが完全にその作品を自分のオリジナルに昇華させてる」と言われることがります。その例として、ロード・オブ・ザ・リングやスタンリー・キューブリック作品などが挙げられていました。この桜多ダイザーは、まさにその例に当てはまる作品で、唯でさえ高濃度な永井豪作品を、物語がズレない程度に調整しながら、完全にオリジナル作品として描ききっています。それは時に、見る者に感動を与え、時に恐怖を与えるレベルです(極端な例ですが、「宇宙の真理を見た」と言われる石川賢作品もコレに当たります)。さあ、そんな桜多ダイザーを順に読み解いていきましょう!

 

【序章】
コミカライズ全般に言えることですが、物語の根本はそこまで変化しておりません。主人公の立ち位置、敵の目的、メカの詳細な設定…etc、などはしっかり原作に準じてます。…序盤までは(←ココ重要)。と言うもの、双葉社出版に第一巻中ごろから早々にオリジナル展開を迎えます。それは、原作者永井豪が断念した(もとい投げた)設定である、闇の帝王の登場です。

実は、初期の企画である「ゴッドマジンガー」には再登場(というかラスボスとして)の予定があったのですが、当時のUFOブームに便乗し、企画を大幅に修正、結果としてダイザーが生まれたという経緯があります。桜多吾作氏はテーマが変わったからと言ってソコを無視せず、闇の帝王のその後とミケーネ帝国に関する独自に解釈を加えた上で、見事に描き切りました。ある意味、スパロボオリジナル展開の先駆けとも言えます。さあ、めでたく再登場を果たした上に、圧倒的な戦闘力で敵であるベガ星連合軍を蹴散らした闇の帝王は主人公であるデューク・フリード、そして兜甲児に対して共闘を持ちかけます。当社は先の大戦での因縁(ちなみに、桜多版グレートマジンガーでは、剣鉄也が戦死します)から、コレを渋っていた甲児でしたが、迫り来る敵に対抗するには彼らの協力が必要不可欠だという答えにたどり着きこれを了承、ミケーネへと向かいます(心なしか、ここでの連合軍の描写は、どの作品よりも強大かつ恐ろしく見えます。)。しかし、連合軍はこれを察知。闇の帝王は応戦するも、その体の秘密を知られ、デュークたちに救援を求めます。ここで桜多オリジナル解釈が炸裂します!なんと、闇の帝王の正体はルパン三世のマモー培養液につけられた脳みそだったのです!人類を死の淵まで追い込んだ強敵の正体が、脆弱な脳だったと知った甲児は激しく揺らぎます。しかし、デュークの説得を受け、彼を安全な場所へと連れて行くことをいめたその時!地震によって手が滑り、闇の帝王の脳が破壊されてしまったのです!

父、そして戦友剣鉄也を死に追いやった恨みから、もしかしたら無意識のうちに手を滑らせたのかもしれない…。甲児の心は疑惑と後悔に包まれます。…正直、心理描写は数ある作品の中でも群を抜いて優れてるのでないかと考えてます。ダイザーでは成熟しきった大人として、滅多なことではマイナスな考えに走らない彼にこういった後悔を抱かせるというのは、リスクもありますが人間味をまして、以下にミケーネとの戦いが苛烈極まるものだったかを理由付けるのに成功してる思えます。さあ、これを読んでるあなた!超展開の連続で、若干パンク気味ではないでしょうか?でもまだ安心できません、なぜならまだ序章だからです!さて、なんとか崩壊したミケーネから脱出したデューク一行でありましたが、ここで不思議な遺跡を発見します。

まるで、グレンダイザーのような謎の魔神、ラーガ。元々は神話の世界から構築していったマジンガーの設定をうまく引き継いだミステリー描写に思えます。Zからコミカライズをずっと担当してきただけに、桜多吾作氏が以下にマジンガーという作品を理解していたか、よくわかる描写でもありますね。これが後々の重要な伏線として機能してくるとは、この時点では誰もわかりません…。

 

インターミッション
インターミッションと称した(カッコつけた)中章です。さて、序章では褒めちぎってきた心理描写云々でありますが、ちょっと褒められない部分もあります。それは…兜甲児の性格です。え?でもさっきあえてマイナス表現をしてでも説得力を持たせたって言ったじゃん?とお思いでしょう…。違うのです、ソコではないのです。彼の行動に問題があるんです。当たり前ですが、今作グレンダイザーにもヒロインは存在します。彼女の名は牧葉ひかる。デュークが人間として生活する牧葉牧場の娘さんです。

この娘に対して、なぜか甲児くんが爆発。事あるごとに襲いかかろうとします(もはや既成事実を作ろうとしてるようにしか思えない)。
さすが桜多吾作
ちなみにこの時、Z時代のヒロインである弓さやかさんとはラノベ的な展開を乗り越え、結婚を誓い合ってるんじゃないか?ってレベルでお付き合いしてます(しかも公認カップル)。

キレてもいいですか?と、まあ行き過ぎたお色気描写がちと顕著な作品ですが、彼以外(失礼)の心理描写はかなり切実なもので、本編や永井豪本人による漫画版の補完の役割を担っているものが多数あります。例えば、フリー土星の生き残り、ナイーダの話。彼女の口から、生き残ってしまったフリード星人の地獄のような状況が生生しくしく語られます。

ココらへん、ほんとに少年誌か?って素直に思いましたね…。また、本編では洗脳せれていたがために、信憑性は極めて低いとされた「敵の主力兵器である円盤獣を操っているのはフリード星人」という台詞が、半分自我を保った状態で放たれます。つまり…これに関してはガチってことです。しかも、今作では設定に(エグさが)一手間加えられており、「フリード星人」が操っているののではなく、「フリード星人の脳髄が組み込まれている」という物に変わっています。…エグい…激しく恐ろしい…。さて、ここまで中編を引き伸ばしたのには理由があります。え~とですね、実は…第二巻だけが入手できませんでした、申し訳ありませんm(_ _)m。ということで、開き直っていきましょう!

 

【終章】
二巻飛ばして終章、つまり最終巻です。(桜多吾作の他のマジンガー作品にも言えることですが)ぶっちゃけ、一巻と最終巻だけ買えば、それが如何に奇異な作品であるか理解できるかと思います。
桜多吾作
…もう表紙の時点でやばいですね。ここで嫌な予感を感じたあなた?おそらく、あなたが思った通りの展開を迎えるでしょう。わからなかった方は、メタルギアソリッドPWでググってみるとヒントが見つかるかもしれません。さあ、最終巻こと第3巻は冒頭からいきなり敵であるベガ星連合本星が放射能汚染によって崩壊を迎えます。さらに、周辺惑星にまでその被害は広がり、脱出できなかった多くの市民が見殺しにされます。
桜多吾作
ココらへんの展開は、バイオ2のラクーンシティに近いです。この報を受けたベガ星連合司令官ガンガルと、科学部門チーフであるズリル長官が今まで以上に躍起になって地球侵攻を推し進めます。一方の地球では、海底から謎の遺跡が出現し、ミケーネの遺跡で謎の指輪を発見したさやかさんが奇行に走るようになります。もうこのへんから別作品です、マジで。ここから徐々に、主人公側のメインがさやかさんへと移り、敵もズリル長官がメインとなって描かれていきます。さあ、この浮き上がってきたガイアー謎の遺跡は接近してきたグレンダイザーを敵と認識し、さやかさんを取り込んでしまいます…。そして、フリード星やミケーネ帝国の技術の起源を語っていきます。そう、この遺跡こそ、ラーガだったのです!

さらに超展開は止まりません。なんと、2大大国で核爆発が発生し、核戦争の火蓋は切られてしまったのです!…怖、超怖い。桜多吾作氏は、しばし作品内に時代に見合ったリアリティのある描写を加えることで定評がありますが、冷戦という時代を反映したこの展開は今見ても恐怖を感じます。

その後事態は収束に向かうのですが、ベガ星連合のベガ大王は核戦争を機に、地球各所に点在するミサイル基地に目をつけ、本格的な核戦争を起こさせようと画策。コレに対して、それでは放射能汚染で滅びたベガ星と同じ末路を迎える、他の方法で侵略しましょう!とズリルは主張しますが、躍起になった大王は、ダイザーの破壊という激むず条件付きで承諾します。この時点でズリルは裏の主人公のようなポジションに変わっており、ヘタするとデュークより出番が多いです。さて、地球滅亡という危機に立たされたズリルは(あれ?なんかへんじゃね?)強力なベガ獣を三体送り込みますが、最悪のタイミングでさやかさん操るラーガが覚醒、ベガ獣を瞬殺。そしてついに始動されるベガ大王の計画。部下とともに謀反を起こしたズリルの努力の甲斐なく、襲撃を受けた基地のミサイルは次々と爆発し、勘違いにより大国は再び核戦争を開始、まさに「世界は核の炎に包まれた」状態へと変わっていくのでした。

それでも諦めないデュークと甲児は少しでもミサイルを減らそうと奮闘しますが、ここにきてさやかさんが◯狂(放送禁止用語)、ラーガに秘められた力を開放してしまいます。完全なる覚醒を遂げたラーガはグレンダイザーを引き連れ、地球の地下深くへ進行。その途中、さやかさんの口からとんでもない秘密が語られる。なんと、ラーガを開発した先史文明は、ミケーネのみならず、フリード星やベガ星の先祖文明でもあり、きたるべき日に、人類が再び愚行を犯すような者であったら、自動的に滅ぼすようにセットされていたのです。

結局、ミサイルの打ち合いとラーガの暴走は食い止めることができず、地球は壊滅。生き残った兜甲児と牧葉ひかるは、自分たちの他に生き残った人を探し、ラーガとダイザーの中で冬眠状態となったデューク、マリア、そしてさやかさんが復活するその日まで人類という種を絶やさないことを近い物語は幕を閉じるのでした…。

幕を閉じるのでした。マジです、ここで終わりです。

 

【まとめ】
久しぶりに書評(というよりあらすじ込みの感想)となりました。いや~、つい熱が上がってしまい、予定以上に長くなってしまいました。文明が滅亡を迎えながらも、自分たちの世界を再建するために旅立っていくという兜甲児、そして守る側へと立場を変えたズリル長官のカットで終わった本作は、見方によっては完全なるバッドエンドとも言えますが、ダイナミックプロ的な視点で見ればハッピーエンドともとれます。なぜなら、この展開はデビルマンにそっくりだからです。原作版デビルマンにおいても、未知の敵の驚異にされされた人類はお互いを信じられなくなり、戦争へと突入、完全なる絶滅を迎えます。それに比べれば、敵、味方双方が心を入れ替え、自分たちの未来を築いていく終わり方にはその鬱エンドに対しての一種の答えのようなものを感じ…なくもないです^^;。桜多吾作氏のダイナミック系コミカライズ全般に言えることですが、原作では到底描けない行き過ぎた展開を数多く描写します。それでも物語としてしっかり成り立つのは、氏の卓抜した構成力が効いているのでしょう。ココらへん、はっきり言って永井豪より上です。そのゴツすぎず、柔らかすぎない絵柄も相まって、こういった複雑な描写も無理なく読み進めることができます。もっと評価されてもいいと思うんだけどな…。ラーガは流石に無理だろうけど、いつか、いつの日かこの展開がスパロボで採用される日を願っても止みません。ということで、桜多吾作版グレンダイザーでした。