漫画 ウルトラ兄弟物語 レビュー

2016年08月9日

若く、未熟なウルトラ戦士たちの戦い、ここに開幕!

今回紹介するのは、漫画家かたおか徹治氏によって連載されていた作品「ウルトラ兄弟物語」。アメコミ的な世界観の広がりやオリジナリティに富んだ内山まもる先生の傑作「ザ・ウルトラマン」の流れを継承しつつも、本作は今まであまり描かれる機会なかったウルトラ戦士たちの若く、未熟な時代に焦点を当てた内容となっており、数多くある漫画作品の中でも独特な存在感を放っています。その中でも特に面白く、話題になるエピソードを抜粋して、紹介していこうと思います。

・決闘!ウルトラ兄弟
かにも有名な酒に溺れたウルトラマンジャック(この時はまだ新ウルトラマン)が登場するエピソード。
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このシーンだけがネタにされることが多い(かくいう筆者もその一人)ですが、まずはそのあらすじを紹介します。

あらすじ
まだ宇宙警備隊が発足される遙か前、宇宙全体を暗黒勢力が襲った。力で侵略を図る勢力の前に数々の星は蹂躙され、ここ光の国のその危機に立たされていた。大隊長ウルトラの父は戦士ゾフィーに最後の希望となる四人の戦士の捜索の命を与えた。かくして、光の国の命運をかけたゾフィーの旅が始まった。

シリアスですね!ネタにされてるせいで霞んでしまうことが多いですが、「ザ・ウルトラマン」と「ウルトラ兄弟物語」ともにシリアスなストーリーが大半で、ほぼ毎回ウルトラの国が壊滅的被害を受けています。もうコレは様式美のレベルです。今回の場合は(たぶん)宇宙警備隊がないこともあり、いきなり壊滅寸前の状況から始まります。その危機を防ぐために、四人の戦士を探すゾフィーでありましたが、この旅も難航。ウルトラマン、エースは素直に協力してくれたものの、セブンは己の技を磨くため、ジャックは昔犯した過ちがトラウマとなり重い腰を上げようとしません。ここの描写から、宇宙を守る戦士としての自覚のなさ、未熟さが伺えますね。最終的にタロウも加わり、見事暗黒勢力の魔の手から光の国を救うのですが、まだまだ苦難の日々が続くことを示唆して、本章は幕を閉じます。かたおかウルトラマンの入門としてはうってつけのエピソードです。

・ウルトラ一族の大反逆
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あくまでも筆者の予想ですが、後述のエピソードと加えておそらくウルトラマンベリアルの元ネタになったであろうエピソード。

あらすじ
宇宙警備隊の大隊長の任命会議が始まった。そこにウルトラの父の兄、ウルトラマンジャックが名乗りを上げる。自他共に実力を認められ、大隊長決定かと思われた会議であったが、「力が全てではない」というウルトラマンキングの言葉によりウルトラの父が任命された。この決定を不服と感じたジャックは直属の部隊を率い、自らの優秀さを示すため、星人狩りを始める。大隊長就任後の父初めての任務は、自らの兄の討伐であった・・・。

ある意味かたおかウルトラマンの方向性を決定づけたと言えなくもないエピソード。ただシリアスなだけでなく、ウルトラ戦士側の暗黒面を描けるが自由に描ける漫画作品の強みであり、この点に関しては内山まもる版をも上回る内容とも言えます。ひたすらに力を求め、恐怖による平和維持を目指したジャックは後のベリアルを連想させます。確かにこのような過激なウルトラ戦士がいるのもおかしく無いですし、多少の力、抑止力が必要というのも理解できないことではありません。しかしそれは恐怖政治以外の何事でもなく、決して犯してはならない領域の一つでもあると思えます。また、ここではウルトラ一族以外の異星人との連携を描いており、世界観の拡張に一役買ってます。広大な宇宙を守るには一種族だけでは限界がありますからね(^^)

・ウルトラ兄弟物語
作品のタイトルにもなってるおり、今作を代表する最も有名なエピソードでもあります。
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あらすじ
宇宙の悪魔と言われたスペースサタンキングが平和会議を申し入れた。怪しい、これは罠だと疑うウルトラ戦士たちであったが、立場上出席しないわけにも行かず、ウルトラの父率いる船団は会議の場であるスペースサタン星へと赴く。順調に進むと思われた会議であったが、突如サタンキングの様子が豹変、戦艦で赴いたウルトラ一族を反逆者と罵り、宇宙のお尋ね者に仕立て上げる。激闘の結果、行方不明となった父率いる船団、同時に各惑星で壮大なウルトラ一族狩りが始まる。こうしてお尋ね者の濡れぐぬを着せられたウルトラ兄弟たちは、その名誉を挽回すべく、スペースサタン星への旅を始める。

今まで以上に絶望的な始まりを迎えた本作。この流れは、内山まもる版での「ジャッカル大王編」を連想させるものの、宇宙規模での指名手配というとんでもないおまけ付きで、規模のグレードアップが図られてます。加えて本作は、‘物語’と付いてるだけに本当に長く、コミック一巻分の濃密な内容となっています。各惑星に逃れながらも、じわじわと追い詰められていく様や、地球を利用することで隠れたウルトラ戦士たちを燻り出していく過程は、内山晩以上の絶望を味わえます。また、この地球を利用する展開で、地球人の心境の変化もうまく描写されています。彼らにとっては遠い宇宙の出来事であるのに、それに巻き込まれ、平和な暮らしと生活を奪われていく・・。これによって生まれるウルトラ戦士たちへの不満は、今までなかなか描けなかった描写ではないでしょうか?この展開もあり、ウルトラ戦士たちの感じる絶望にも説得力が生まれます。さらに、宇宙規模での政治支配を描写することで、サタンキングの行動や指名手配にリアリティを持たせ、話全体が重たい方向へと向かっていきます。最終的には平和を取り戻せるのですが、間違いなくかたおかウルトラマン最大の絶望感を感じるエピソードですね。

・ウルトラマン80 第十、十一話

珍しい(失礼!)80のコミカライズ作品。ここで紹介する十一話が最終回であり、前半は原作に沿ったエピソード、後半はオリジナリティのつよいさくとなっています。(いつもの事とか言わない)

あらすじ
ウルトラの国を追放され、ブラックホールに封印された伝説の戦士サンダーアローが復活した。ウルトラの国への復讐を目論むサンダーアローは念力で怪獣墓場に眠る怪獣を復活させ、プラズマスパークを襲撃する。多数の怪獣軍団の前に為す術もなく一人、また一人倒れていくウルトラ戦士たち。果たして、この危機を80は打破することができるのか?

「ウルトラ一族の大反逆」で取り上げたベリアルもう一つの元ネタと思われエピソードはこれのこと。追放され、封印される、多数の怪獣軍団を指揮する、プラズマスパークを襲撃するなど、どこからどう見てもベリアルの元ネタである。(裏を返せば、どこからどう見てもベリアルはサンダーアローである。)また、復讐によるウルトラの国襲撃と、多数の戦士の命を奪うといえば内山まもる先生のコミカライズ版ウルトラマンレオ最終回を思い出します。今作もあれに匹敵する悲劇的結末を迎えるのですが、単なる闇討ちに終止したシャドウマン(レオコミカライズのラスボス)に対して、サンダーアローは計画性のある復讐を果たした点がポイント。これを見破った方法というものまた、リアリティがあります。しかし最終的には慢心による敗北を迎えるので、その点はベリアル及びシャドウマンと同じレベルだったと言えるですしょう。人によっては、ハッピー、バッドエンドどちらにも解釈できる終わり方は、この時代特有の、先の見えない暗さを象徴してるようにも見えます。それでもめげずに輝き続けるシンボルとして、ウルトラマンの存在があったんでしょうね。

〈まとめ〉
長くなってしまいました。しかし、紹介したいエピソードを出せたので満足^_^
ここに来るまであまり挙げてきませんでしたが、長所短所について書き、締めくくろうと思います。まず長所ですが、それは単純娯楽で終らない奥行きのあるエピソードと、後発の作品にも影響を与えたと思われる魅力的なオリジナルキャラたちです。内山まもる先生のお書きになった「ザ・ウルトラマン」にもジャッカル大王やアサシン星人といった独特の存在感を放つ敵がいましたが、背景設定を高めることにより、その魅力が増しています。これが見どころですね。短所、というか作風の違いですが、大胆奇抜なアクションに作りこまれたデッサンを見るという意味では、内山まもる先生が秀でているでしょう。中でもレオや「ザ・ウルトラマン」内でのウルトラ戦士のアクションは凄まじく、デッサンの練習にもなるものがあります。対して、かたおか徹治先生は、ウルトラマンの佇む姿に力を入れてるように思えます。これは怪獣にも言えます。こうして見ると、御二方がどこに比重を置いてウルトラマンを書いているか見えてきますね。そんなところに着目するのも今作の醍醐味です。いずれにせよ、この作品群が構成の作品に多大な影響を与えたことは明白で、長いウルトラの歴史を知る上でも貴重な資料になりえます。なかなかに手に入りにくく、プレミアが付いてしまっていますが、機会があったらぜひ手にとってもらいたい作品です。